【完結】終わった恋にフラグはたちません!
第十五話 ☆ 複雑な女心

美女は寝起きでもやっぱり美しい。

昨日、泣いてしまったからかいつも以上に顔はむくみ、髪はボサボサ、何年も変えてないヨレヨレのパジャマを着ている私とは雲泥の差だ。

「立木さん。おはようございます」
「お、おはよう亜里沙さん」

石川君の突然の告白は自分でも気づかないうちに興奮していたらしく、昨日はなかなか寝付けずやっと眠り始めたかと思うとまたすぐ起きてしまうの繰り返し。

……だって、しょうがないじゃない。
男性に告白されることなんて滅多にないんだから。
それに、せっかく昨日決心していたゆうちゃんへの告白も、なんか少しトーンダウンしちゃってるし……

告白はある意味、タイミングと勢いが必要。でも今回はそのどちらにも当てはまらなかったよう。
自分で告白できなかった言い訳を突っ込みながらブツブツと独り言を言う私。
このままベッドの中にいても眠れそうになかった私はちょうど喉も乾いてきたのもあり、重い溜め息を吐きながらリビングにあるキッチンへと向かった。

そしてちょうど水をゴクゴクッと一気飲みし終えた時のセリフが冒頭の言葉になる。

リビングに突如現れた亜里沙さんは私とは対照的に、あなた寝起きですか!?…と突っ込みたくなるほど、普段と変わらぬ美しさ。

シルクなのだろうか、肌触りの良さそうなベージュ色のワンピースに何の絡みもないストレートな黒髪。寝癖とは無縁のように見える。
それにスッピンなのに惹かれてしまいそうな肌の艶と顔の作り……何もかも歩んできたもの、天から与えられたものが違い過ぎると思った瞬間、急に自分の女子力の無さが恥ずかしくなった。

いやいや、そもそも年齢差があり過ぎるんだって。確か亜里沙さんは二十一歳って言っていたような……。

「あの、亜里沙さん…は今、大学生、なんだよね? 今日はこれから大学、かな?」

何となくの気まずさを打ち消すように私は彼女に話しかける。年齢差があっても年上の良い所はあったりするものだ。
先制に話しかけ、トーク力、社会人アピールをしてみて心のどこかで大人の余裕ってものを見せつけようとした。
断じてゆうちゃんに対するライバル心を見せたわけではない。

「ええ。今日は朝早くから講義があって」
「そうなんだね─、亜里沙さんなら大学でもモテモテでしょう?」
「……いえ、好きになった人に振り向いてもらえなきゃ、意味ないですから……それより立木さんって」
「ん?」
「もしかして澪先生とお付き合いされてます?」
「えっ!?」

呆気なくも大人の余裕というものは、若い子の直球かつ破壊力のある質問によって脆くも崩れ去ってしまった。

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