【完結】終わった恋にフラグはたちません!

動揺しまくりの私に対して、亜里沙さんはその切れ長の大きな目で私をジッと見つめてくる。獲物でも捉えられそうな目力だ。

と、突然、何でそんなこと?……私とゆうちゃんが付き合ってるって思われるような素振り、したっけ!?

「つ、付き合ってない、付き合ってないよ! 私は澪先生の編集担当ってだけで──」
「でも、澪先生のこと()()ですよね」

うっ、なんだこの若い子の洞察力……なぜわかるの?

渋い顔をしながら、しばらくして大きな溜め息を吐いた私は直球な質問に観念し項垂れる。

「……はぃ…好き、で、す…」
「やっぱり。先日、(うち)へ来た時、小声で “ゆうちゃん” って呟いていたのを聞いて、もしかしたらそうなんじゃないかと」

うわぁ─…私そんな声、いつの間に漏れてたんだ? 全く記憶がない…

なんかもう、ゆうちゃんを好きなこともバレてしまったし、今更あれこれ取り繕っても仕方がない。
実は私も、心奥底でずっと気になっていたある疑問を亜里沙さんに聞いてみたのだ。
──あの時、ふと見せた亜里沙さんの寂しい眼差しのことを。

「あの─…気を悪くしたらごめんね。
その、亜里沙さんは本気で澪先生と結婚したいって思っているの、かな?」
「あ、当たり前です。でなきゃお見合いなんてしません! 私は澪先生が……」

私の問いかけた言葉によって亜里沙さんは徐々にヒートアップしていき声も大きくなっていく。

「ご、ごめんね、変なこと聞いて。ちょっと気になっただけだから、あまり興奮しないで」
「あ、すみません…私の方こそ興奮してしまって」
「ううん。……あ─じゃあ私はもう部屋に戻るね」

少しの疑問だけで、亜里沙さんに変なことを聞いてしまった反省と燻る嫉妬心に自分を戒めながら部屋へ戻ろうとした。

──が、その時、亜里沙さんが「あの!」…と、私を急に引き止め、あることを聞いてきたのである。

「立木さん! …あの、変なことを聞いちゃうんですが、もし立木さんが…例えば澪先生に重大な秘密があったとしてそれを知ってしまったら……立木さんはどう、されますか?」

亜里沙さんは食い入るように真剣な眼差しで私に質問してくる。
一瞬、その意味のわからない質問に戸惑いもしたが、あまりに真剣に私の答えを聞き出そうとしてくるので私も真剣に例えばの話しについて返答した。
──まぁある意味、ゆうちゃんがバイだという秘め事を知ったのだから、例え話ではないのかもしれないけれど。

「う─ん…やっぱり最初はそれに対してビックリするのかもしれないけれど……
でもその秘密は澪先生の一部であって大事なものなんだろうし、それを知ったとしても相手が愛しい人だと感じるのだったら……私は今までと特に何も変わらない、ずっと澪先生を好きなままかな。
澪先生はその秘密も含めての澪先生だと思うしね」

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