【完結】終わった恋にフラグはたちません!
第十九話 ★ 真相(祐一side)

───────八年前

当時の僕は商社に入ってちょうど二年目が過ぎようとしていた。
仕事にも慣れ愛しい人との結婚も実現し、これからの自分の人生を伊織と共に歩んでいくことが楽しみで仕方がない…

ちょうどそんな時だ。

その頃、新しい商品プロジェクトが立ち上がり、そのまとめ役でもあるチーフに僕は抜擢。
ある程度その商品を売り出す方向性が定まってきたそんな時──僕はこれからの人生を揺るがす女性に出会ってしまったのだ。
……とてもずる賢い悪魔のような女性に。


「── え─では、この商品のPRタレントは高光 杏(たかみつ あん)さんを起用することとなりました。それでは杏さんから一言お願いします」

高光 杏は最近、人気が爆上がり中の新人タレントでコマーシャルやテレビ番組などでよく見かけるようになっていた。

やはり元モデルともあって長身かつスタイル抜群のプロポーションをしており、茶髪でストレートの髪は肩まで伸び若い子特有の今時ファッションを着こなしている……が、正直僕はなぜ彼女が大口案件の仕事をこんなに次々と取っているのかが不思議で仕方がなかった。事務所の力なのか?

確かに最近、同じ仕事を競い合っていたタレント達に不慮の事故が続いていることは知っている。
だから、そんなこともあって残った彼女を起用する企業が増えてきているのかもしれない。

「あの、高光 杏と言います! まだまだヒヨッコで足らないところもあるかと思いますが、全力でこちらの商品をPRしていきたいと思っています。よろしくお願いします!」

周りからは大きな拍手が上がる。商品の企業や僕らみたいな商社マン、芸能関係の方達が多くいるこの会議上では、彼女のファンというお偉方もいっぱいいそうな雰囲気だ。

「それでは予定通り明日十八時、万条目(まんじょうめ)ホテルにてこちらの商品のお披露目パーティーを行います。皆さん、商品売り上げアップに注力をお願い致します!」

明日は、各企業や芸能関係に携わる人達を招待しての大々的なお披露目パーティーを催す運びとなっている。
そこで今回、コマーシャルに起用する高光 杏もサプライズ的に紹介することになっていた。

しかし、パーティーというものはこの仕事をしている限りよくあることだけれども、正直僕は早く帰って伊織とラブラブな時間を過ごす方が断然良かった。

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