初恋ディストリクト


 商店街の出入り口の両端はどちらも車が激しく行き来する通りに面し、頭上にはアーケードが広がり雨も気にせず買い物もできる一本の抜け道といってもいい。

 片方は駅へと続き、そちら側に面した大通りは町の中心部になってバスも通り、もう片方と比べると車の行き来が激しい。

 今、その駅に近い方の通りに面した出入り口に、私と澤田君は突っ立っていた。

 ここまで空間が広がったのは素直に喜ばしいけど、商店街の出入り口から大通りに向かっての外の景色が見えず、透明であったはずの壁がその出入り口では白く、まるで氷の壁をみているようだった。

「あれ、どうして向こう側が見えないの?」

 私が訊けば、澤田君も首を傾げた。

「ずっと目に見えない壁であったのに、ここに来てその壁の存在が見えるようになった。そして不透明でその先が見えないのはまるで、ここから出られないと蓋をされているみたいだ」

「私が白いもの限定でしりとりなんかしたから、私たちがイメージした白に影響されてしまったとか?」

「いや、それは……」

 言葉につまる澤田君。

 やっぱり第一にその可能性を考えていたみたいだ。

「ねぇ、反対側も確認しよう」

 今までの法則からすれば、もう片方も同じように空間が移動しているはずだ。

 私たちは商店街を横断する。

 端から端へと歩くと結構な距離があった。

 真ん中あたりには路地があり、ここから私たちが入ってきたところだ。

 そこを越えて反対側に行く。

 先の出入り口は中側から外側の光のコントラストが激しくここからだと白く光って見えた。

 それは近づいてもやっぱり同じで白いままだった。

「こっち側の空間も同じように広がって壁ができてる」

 端まで来ると、澤田君はその出入り口にふさがる壁を触った。

 広くなっているとはいえ、目の前の出入り口がふさがっているのを見るとまゆ毛が下がり少しがっかり気味だ。

「向こう側と同じように、白い半透明の壁だね」

 私も、それに触れながら言った。

「この商店街の両端がふさがれた状態か」

 澤田君は考え込んだ。
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