夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

「課長がそう言ったんだよ」

「……もしかして、お父様が」

 予想外の出来事に、美緒は亮介の言葉を聞いて、沈黙する。彼女にも思い当たる節はないようだった。
 
「それ以外に考えられないけど」

「どうして、そんなことを……」

「俺が分かる訳ないだろ」

「すみません……。お父様に聞いてみます」

「いや、いいよ。もう、決まってることだし」

「でも」
 
 休憩室を出て行こうとする美緒を制止し、亮介は苛立ちを抑えて告げる。

 彼女が社長に聞いたところで、きっと埒が明かないのは目に見えている。なら、無駄な足掻きはするべきじゃない。

「仕事の途中なのに、引き留めて悪かった」

 一方的に話を切り上げると、何かを言いたげな美緒の視線を背に、亮介は休憩室を後にする。

 あの社長の考えていることが理解出来なかった。

 愛娘を想うあまりに、彼女にさえ黙って勝手なことをしたのか。相変わらず、強引で手段を選ばない相手だ。

 本当の敵は、美緒ではなく、その背後にいる父親かもしれない。

 営業課に戻る途中のエレベーターで、亮介は苛立ちを抑えきれずに舌打ちをした。
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