夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
「取るから、じっとしてろ」
見かねた彼が、口元を優しく拭き取る。
「あ、ありがとう、ございます……」
羞恥で俯いた彼女を見て、亮介は近付き過ぎた身体の距離を戻して、誤魔化すように烏龍茶を呷る。
彼女と普通に会話が出来ることに内心、安堵していた。けれど、それなら美緒は、どうして俺を拒絶し始めたのか。そんな疑問が、心の奥底から湧き上がる。
お互いに一本目の串カツを食べ終えたタイミングで、亮介は率直な疑問を美緒に投げ掛けた。
「なんで、俺を避けてたんだ」
怯えるように、一度だけ小さく身体を震わせる。その姿はまるで、叱られた子供のようだった。
そういう反応をされる度に、言いようのない罪悪感に苛まれる。
「本当は俺のこと、嫌いなんだろ」
なんとなく気づいていた違和感。それは美緒が、俺に対して恋愛感情を抱いてはいないことだった。
結婚を強引に迫ってきたときも、そうだった。焦燥感に駆られているような彼女の必死さ。相手を見てはいない身勝手な振る舞い。
その一貫性のない行動は、その先の何かに意識が向いているからではないかと、亮介は思っていた。
「それは……違います」
「なら、理由を話してくれないか」
美緒は何かを考えるように、沈黙していた。
彼女が口を開くまで、亮介は耐えるように、じっと待ち続け、そして──。
「この後、少しだけ、お時間ありますか」
決意を固めたのか、美緒は顔を上げて、亮介を見据えた。