夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

「勘違い──」

 嶺奈は彼の言葉を否定しようとして、その言葉を遮られた。
 
「勘違いはしてない」

 ますます、見えない大きな暗闇に落とされたような感覚になる。

 私は何かを忘れているの?

「嶺奈、俺は本気だから。君を幸せにする。阿久津を後悔させるくらいに。だから、嫌じゃないなら、俺を受け入れて」

 彼の瞳は真剣そのものだった。

 また、絆されて、騙されてしまうかもしれない。けれど、私はそれでも構わないと思った。

 一縷の望みがあるのなら、例えそれが致死量に至る猛毒性だとしても、私は彼を──彼の全てを受け入れる。

「……受け入れるわ」

「ありがとう、嶺奈。……俺のこと好きになって。俺以外見ないで。──あいつを忘れて」

 ゆっくりと重ねた唇は、お互いの熱に浮かされ、溶けてしまいそうだった。

 彼に弱味に漬け込まれたとしても、私はもう戻れないところまで堕ちている。

 だから、貴方の好きにして──。



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