BeAST




鼓動が、自分の鼓膜を揺らしている。


脈が速くなる。

今度は俺が震える番。


冷静に、なれ。


片手で心臓のあたりを掴む。


……この感覚は知らない。

今まで経験したことがない。


でも、不思議と、怖くはない。

ただただ、丞さんが触れている場所が熱い。


「なあ」


「ん?」


丞さんを恐る恐る見上げる。


「すげえ、俺の心臓の音、うるせえ」


甘えて、いいんだろ。

馬鹿みたいな、疑問。

俺より大人なら、分かるんだろ。


丞さんは、そんな俺を見て驚いている。

そして、はぁ、とため息をつく。


「……俺今、誓ったばっかりなんだけど」


「は…?」


そう言いながら、俺の手を掴んで、丞さんの心臓のあたりを触らされる。


感じる心音は、俺と同じように速くて。



「人のことを恋愛の意味で、好きだって思った時、人は心臓が速くなるもんなんですよ。灯織さん」


眉を八の字にして、目を細める丞さん。


す、き……



「え……」



「キス、嫌じゃなかった?」



そう聞かれて、何か、腹の底がむず痒くて。


嫌悪はなくて、ただただ気持ちが良くて。


これが、もし、好きということならば。


そう考えた瞬間、ブワッと身体中の血が沸騰したように頭に集中した。



< 138 / 337 >

この作品をシェア

pagetop