BeAST
「あいつは、お前の友達だったのか?」
静かに聞く井筒。
「…違う。俺らはあいつのことを知らなかった。ただ、共通の知人がいて、灯織は俺らのことを知っていたらしい。」
「じゃあ、その知人ってやつが、灯織の友達か?」
「…いや、灯織はかなり嫌ってる」
柿谷が、しおらしく答える。
行き場のない怒りで、井筒の体の震えがどんどん大きくなっていく。
「じゃあ……なんでだよ。なんで、灯織は、怪我してまでお前らの為に動いてたんだよ…っ!!!」
揺さぶられる柿谷は、眉間に皺を寄せて、俯く。
「それは、灯織の過去に理由があるらしい。」
淡々と、そう話すのは皇。
「俺達も、灯織から直接聞いたわけじゃない。同じ孤児院にいた、神尾環さんに聞いた」
神尾さん……
「環さんの医療費を肩代わりする代わりに、俺達の過去を、俺達自身の関係を修復しろと灯織の親代わりである相見先生から指示されたらしい。」
「……待って、孤児院って?」
ああ、犀川達は知らないんだったな。
「灯織が孤児院出なのは、俺と井筒しか知らないんだ。他の皆に余計な気を使わせたくないって」
「そうだったのか……悪い。俺達もこの間知ったんだ」