皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり
「殿下、おっしゃっている意味がわかりかねます。それでは護衛がゆきとどきません」

この方の思考はどうなっているのか、護衛を何だと思っているのか。

ソフィアはただただ、ポカンと立ち尽くした。

「噂の近衛騎士長の力量も大したことはないな。ドレスでは護衛ができぬ程度とは」

ルイスはソフィアに「どうだ? 言いたいことがあるなら反論してみろ」とでも言いたげな表情だ。

ーー何なの? この皇太子殿下。私を挑発している?

ソフィアは体がカーッと熱くなっていくのを感じた。

殿下の挑発にのるのは悔しいけれど、嘲笑われたままでいるのは、もっと悔しかった。

「殿下。見くびらないでいただけますか? 私はどんな装いでも、殿下をお護りしてみせます」

ーードレスでも着物でも完璧に、護衛を務めてみせる

ソフィアはゆっくりと深呼吸し、気を静めた。

そして殿下の目を見つめ、涼やかに宣言してみせた。
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