皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり
夕刻、ソフィアはルイスの元にドレス姿で参上した。

「悪くない。軍服姿よりずっと良い」

ルイスは開口一番、言い放った。

「お褒めに預かり、光栄に存じます」

ソフィアは恥じらいを隠し、礼を述べた。

ドレスの下には暗器を忍ばせ、有事に備えている。

結い上げた髪を止めた髪飾りにも、細工が施され、素早く対応できるようにしている。

ルイスはそれを知っているのか、護衛のことにはひと言も触れなかった。

舞踏会が始まるや、ソフィアはたちまち出席者たちの目を惹いた。

「あのご令嬢は?」

身分も年齢も男女も構わず、ソフィアに視線が注がれた。

ソフィアはその間も、気を緩めることなく出席者の動向を見極めるため、全神経を集中させた。

着飾ったソフィアを誰も、近衛騎士とも皇太子殿下護衛とも気づかずに、声をかけてきた。
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