冷血公爵様が、突然愛を囁き出したのですが?
「分からないのか? お前達はこれまでマリエーヌを卑下し、ぞんざいな扱いをしてきたのだろう? それを僕が許すはずが無いだろ」
「それは……だって旦那様だってそうだったじゃありませんか!? 奥様の事なんてこれっぽっちも気にかけたことがなかったのに! だから私達だって同じ様にしてきただけで……それなのに、なぜ私達がこんな仕打ちを受けなければならないのですか!?」

 侍女の一人が声を荒らげて訴えかけると、公爵様は少しだけ顔を伏せ、唇をグッと噛みしめた。
 その表情がなんだか苦しんでいる様にも見えて、少し胸が痛んだ。
 
「その通りだ。僕の罪も、決して許されるものではない。こんな僕が今更マリエーヌにどう償おうとも、償いきれないだろう」
 
 そう言うと、公爵様は私と向かい合わせになる様に立った。
 先程の苦しむ様な表情は一転し、何か強い意志を秘めた様な瞳を私に向けている。

「マリエーヌ。今までの僕の愚行、本当に申し訳なかった。僕を許さなくてもいい。だけど、君の側にいる事だけは、どうか許して欲しい。僕は君が幸せになるためならなんだってする。君は僕の全てなんだ」

 真っ直ぐに私を見つめる公爵様は、まるで別人になってしまったかのよう。
  
「僕はこの先、何があっても君の事だけを生涯愛し続けると誓う。君の願いならどんな事でも叶えてみせる。例えこの世界を敵に回しても、君の事だけはこの命が尽きるまで、いや尽きたとしても必ず守り抜いてみせる」

 公爵様は、初めて恋に落ちた少年の様に、私の事を愛しくて仕方がない様な表情で見つめてくる。
 その言葉を、私はどう受け止めればいいのだろう。
 だってこの状況、この言葉も全て、絶対に熱のせいでしょう?

 期待しちゃいけない。
 きっと明日になれば、公爵様は全てを忘れていつもの冷たい公爵様になっているはずだから。


 
 そう思っていたのに――。
 
 明日になっても、その次の日を迎えても、公爵様が正気に戻る事は無かった。
 
 この日を境に、公爵様からとめどなく溺愛される日々が始まった。


 
< 6 / 16 >

この作品をシェア

pagetop