7日後の約束は〇〇…秘密を抱えた2人の奇跡の恋物語…

 今から3年ほど前。
 奏弥が勤務する事務所に凜が入社してきてから、2年経過した頃。


 仕事にも慣れて来た凜は、依頼が増えて来て遅くまで残業する日々も多かった。
 時折り奏弥も遅くに事務所に戻って来て、残業している凜に遭遇する事も少なくなかった。

 奏弥が声をかけても、凜はそっけない返事しか返さない。
 帰りが一緒になってもわざと反対方向へ行ってしまい、奏弥が合わせて反対側に歩いてゆくと早歩きで歩いて行ったり、全速力で走って行ってしまったりと近寄りがたかった。

 そんなある日。
 奏弥が残業を終わらせて、久しぶりに早い時間にかえる為、たまにはどこかでゆっくり飲んで帰ろうと思い静かなショットバーに立ち寄った。
 あ酒が飲める方ではない奏弥だが、たまに頭を空っぽにして静かに飲みながらボーっとするのが好きだった。

 行きつけのショットバーに奏弥が行くと、そこに今まで見たことがない凜がいた。

 一人でカウンターの片隅でカクテルを飲んでいる凜は、どこか悲しげな目をしていて何かをぐっとこらえているようにも見えた。

 声をかけようか奏弥は迷っていた。
 きっと声をかけても突き放されるだけだろうし、一人で静かに飲んでいるのに邪魔してはいけないだろうし…。

 迷いながらチラッとチラッと凜を見ていた奏弥だったが、何度目かの時に目と目が合ってしまった。

 あ! ヤバイ…。
 そう思った奏弥は視線を落として、暫く俯いていた…。

 だが、じッと見ている凜の視線を感じたままでどうする事も出来なくなり、スッと席を立って凜の傍に歩み寄て行った。

 とりあえず、気分を害しているだろうから謝ろう…。
 
 そう思って凜の傍に奏弥が行くと、やはりムッとした顔をしていた。

「ご、ごめんなさい。せっかく一人で飲んでいるのに、邪魔をしてしまって」
「隣り…座って…」

 てっきり突き放されると思っていたが、隣に座ってと言われて奏弥は驚いたが、やっと近づけた思いが先立ち嬉しくなった。

 隣に座った奏弥は、ちょっと緊張した面持を浮かべていた。

「好きなの頼んで…せっかくだから、ご馳走するから…」
 え? なんで?
 てっきり突き放されると思ったけど…。
「あ…じゃあ、桐野宮さんが吞んでいるのと同じものをお願いします」
 
 黙ったまま、凜はカウンターの向こうにいるバーテンダーに同じものを作ってと目で合図をした。
 
 シャカシャカ…。
 カクテルを作る音が響いてい来た。

 特に会話を作ろうとしないまま、黙って隣同士で座っている奏弥と凜。

 カクテルが出来上がって、奏弥の前に出された。

 綺麗なブルーのカクテル。
 上品な三角形のグラスの中に、サクランボがポツンと浮かんでいる。

「いただきます」


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