成果報酬有りの家庭教師にイケメン弟の写真というにんじんを鼻先にぶら下げられて、もう走るしかない。
 それは、確かに間違いないことではある。私は、彼の質問に何度か大きく頷いた。

「でっ……でも、折原くんと私は釣り合わないです。無理です。絶対に無理」

「無理じゃない。だって、結局は俺たち結婚するんだし、釣り合うとかどうでも良くない?」

「結婚……」

 確かに私たちがしーちゃんひーちゃんと言い合っていた時に、そんなことを約束していた。だけど、あれは幼い頃にありがちな小さな恋の物語だ。

 その光景を見て聞いた誰もが、その約束が将来果たされる事になるなんて、かけらも思ってもいないだろう。

「結婚は、絶対する。俺だって、その最終目的のために色々と我慢重ねて来たんだよ。もう我慢をしなくて良いなら、俺にも考えがある」

 そして、決意を秘めた目で折原くんはその場から立ち上がった。
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