成果報酬有りの家庭教師にイケメン弟の写真というにんじんを鼻先にぶら下げられて、もう走るしかない。

交換条件。

「ちょっ……ちょっと、ちょっと待って」

 私はこのとんでもない事態の立て直しを図るために、頭をフル回転させた。

 とは言っても、家庭教師に弟の写真で釣られて本格的に勉強するようになり、ようやく成績が上がったことからお察しの通り、元々頭が良い方でもない。頑張って考えたところで、活路が見出せない。

「待たない」

 グイッと強い力で、折原くんの手に引かれて私は立ち上がる。

 私は幸いまだ開いてもいなかったお弁当の入ったポーチを手にしてから、大股で歩く彼の後を小走りに着いていくしかない。

「ごっ……ごめんなさいっ……写真くれるって言われて、嬉しくて……気持ち悪かったよね。ごめんね」

 なったことなどないから、単なる雰囲気なんだけど処刑台に連れて行かれる囚人のような気持ちになった。

「話、聞いてた? 俺はそこに怒ってるんじゃなくて、付き合おうって言ったら断られたことに怒ってるんだけど」

「だっ……だって! 保育園の時に仲良しだったしーちゃんと折原くんが名前が一緒だから、一応気がついていたけど……私の中では、全然一致しなくて……全然違うんだもん。アイドルっていうか、夢の中に居る存在っていうか……」
< 13 / 25 >

この作品をシェア

pagetop