成果報酬有りの家庭教師にイケメン弟の写真というにんじんを鼻先にぶら下げられて、もう走るしかない。
 そう言って、彼は目を閉じたので、キリッと整った顔が私の目の前にあった。黒い目を閉じると、まるで造りものの人形のようだった。美容に興味の湧き出した自分が気になっているからこそ見てしまう肌は、綺麗すぎて毛穴が見えない。

 形の良い唇は血色も良く、今か今かと待っているような気もする。実際、折原くんは私の動きを待っているんだけど。

 十六回……この形の良い唇に私の唇を重ねるだけで、それだけで許してくれると言うのなら、それはそれで良いことなのかもしれない。というか、彼のファンである身分から言わせてもらえれば、ラッキースケベくらいの気持ちで享受するべきではないのだろうか?

 そうして、私は彼の唇に自分の唇を寄せた。
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