成果報酬有りの家庭教師にイケメン弟の写真というにんじんを鼻先にぶら下げられて、もう走るしかない。

放送。

 ふわっと、触れた唇は温かくて柔らかかった。

 緊張に胸が痛くなりつつも、なんだこれを十六回繰り返せば良いだけかとそう思った。のは、大間違いだった。

「っ……んんっ……んっ……」

 急に折原くんの手が背中に回り抱き寄せられて、私たちの身体は隙間をどうにか埋めるように密着した。本能的に彼から逃げようとした私は、腕を思い切り突っ張らせようとしたものの力で敵う訳もない。

 待って欲しいと口に出したくて、開いた唇には言葉が出せない代わりに折原くんの熱い舌が迷い込んだ。荒々しく口中を暴れ回り、そこには何の遠慮などもない。それは歯列をなぞり口蓋の形を確認するように這い回り、気が付いた時には私は彼と舌を擦り合わせてお互いの唾液を飲み合っていたのだった。

 深いキスというのは、知識として舌を絡ませ合うことは知っていた。それを知っていても、実際経験するのはとんでもなく気持ちの良いものだった。軽く触れ合うだけだった私の心づもりから大きく離れてしまったというのに、もっともっとと身体が欲している。
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