成果報酬有りの家庭教師にイケメン弟の写真というにんじんを鼻先にぶら下げられて、もう走るしかない。
 確かに、こちらの確たる了承を得ずに始まった深いキスではあった。けど、それは全然嫌なものではなかった。何故かと言うと、私は折原くんが好きだし彼も私の事を好きだという事を知っている。つまり、それって両思い。そう。両思いである人との深いキスは最高であると、私は何かの機会があればこれをした経験で感じたことを証言をしても良い。

「んっ……んんっ……はあっ……はあっ……おりはらくん……」

 目を開けて見えるのは、とても整い頬が紅潮していた顔だった。興奮していると、思う。きっと私も、彼と同じような顔をしているだろう。鏡を見るまでもなく、それが理解できてしまうほどに初めてのキスは気持ちの良いものだった。

「いっかいめ」

 私が何かを言う間もなく、折原くんはまた私の身体をぎゅうっと抱き締めた。これが後、十五回出来るんだと熱くて溶けそうになっている頭の片隅でそう思った。
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