美しすぎる魔王様に助けられて異世界で偽装結婚? でも美容師としても働きますよ。
第8話 それぞれの想い

しかし、ロジャーの心配は思わぬ形で当たってしまったのだった。

翌日、アイリスが朝食を片付けてくれたすぐ後のことだった。
アイリスが部屋を出ると、間もなくして誰かがドアをノックしたのだった。

「はい、どうぞお入りください。」

入って来たのは、今出て行ったばかりのアイリスだった。
少し妙な感じはしたけれど、何か忘れ物をしたのかと気に留めることは無かった。

しかし、部屋に入って来たアイリスは、いきなり私の座っている椅子の後ろにまわった。
そして、私が声を出そうとした瞬間、薬品の匂いがする布で私の口を押えた。

「う…ううう…うう」

声を出そうと思っても、口を押さえられていて言葉が出せない。
抵抗しても力が強くて全く動けない。

(…この人はアイリスではない…誰なの…男?)

間もなくして、急激に激しい眠気が襲ってきたのだ。
目を開けていることが出来なくなった私は、耐えきれず瞼を閉じてしまった。

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