最後の夏をもう一度

          *


俺と沙織は色んな屋台をまわった。


高校生の俺と中学生の姿の沙織は妹に間違えられた。


その度に、口を膨らせてすねていた沙織は可愛かった。



「楓!花火もうすぐ始まるよ」



石段を駆け上がってあのベンチに座る沙織。


はしゃいでいる沙織と反対に俺の気分は下がっていた。


花火は夏祭りのいわゆるフィナーレであるから。


二人でベンチに並ぶ。



「懐かしいね」


「そうだな……」



夜空を見上げる沙織の表情から、感情を読み取ることは出来ない。



「ねぇ、楓。この花火が終わったらまたバラバラになるね、私達」



沙織の言葉に返す言葉が一つも見つからない。



「……キスしようよ、最後に」


「え……?」


「お願い」



バンッ



夜空に大きな花が咲く。



花火によって照らされた沙織の目からは涙が流れていた。


俺は無言で顔を近づける。


そして、ニ年ぶりのキスを交わした。



「楓、大好きだよ」



「俺も好きだよ、沙織」



沙織の目からだけではなく、俺の目からも大粒の涙が流れる。


泣いているのを誤魔化すように、沙織を抱きしめる。



「また、会えてよかった」


「俺もだよ」




沙織の姿はどんどん薄くなり、夜空に消えていく。



花火と同時に沙織も消えてなくなった。



「……ッ」



口から嗚咽がもれる。



「沙織、大好き。忘れない」



夜空に向かって叫ぶ。


すると、一通の手紙が降ってきた。


差出人は沙織だった。



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