男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
「うん。朝もあげてるからね」

 おかげでエリザのコートのポケットには、キャンディーが常備されている。

「私、甘党ってルディオだけだと思ってたけど、ジークハルト様もなんだね」
「モニカさんのクッキーを食って育ったんだから、あいつだって甘党に決まってるじゃん。なぁ、そのキャンディーってさ、ブルーノさんとこの店のだろ? 俺にも一つくれよ」
「給料前だから自腹なの。自分で買ってきて」

 エリザはぴしゃりと断った。

 一つ一つ丁寧に包装された各色のキャンディーは、一瓶で買うとかなりの値段になるのだ。

(というか、十九歳でキャンディーのご褒美が効くというのも、どうかとは思うんだけどねぇ……)

 本当に子供みたいな人だ。思わず息を吐く。

 女性を怖がって引きこもっている時間が長かったせいか、仕事をしている時の横顔と、完全にプライベートな一面では落差が激しいと感じた。

 子供心を残した大人、というには、幼い考えが強くて困る。
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