男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 到着してからと言うもの、ジークハルトは父の横で、王子様のような優しい微笑を浮かべて完璧な社交をしていた。

(すごい猫かぶりだ)

 事前にルディオやラドフォード公爵からも聞いていたが、『誰だこいつ』と思わざるを得ない。

 歩きながら、二人は挨拶に追われて笑顔で忙しそうにしていた。

 エリザは何もできることがなくて、ただ二人の少し後ろを同行する。

 怒涛の挨拶攻撃をかわして会場を進んだのち、ようやく一息つけることになった。

「陛下に挨拶をしてくる。待っていてもらえるかな」
「はい」
「さ、ジーク、行くよ」

 エリザは一時待機で、料理コーナーで二人と別れた。ラドフォード公爵とジークハルトをいったん見送り、軽めだった昼食を補うように料理をつまんだ。

 演奏が続く広い会場内では、多くの貴族達がダンスや談笑をしていた。

 女性達は美しいドレスや宝石で身を飾り、男性達もまた煌びやかな場に相応しい上等な恰好を決め込んでいる。

(なんだか異世界みたいだなぁ)
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