ハライヤ!
水原さんの言っていることが分からずに混乱する。

「待て待て。いったい何を言ってるんだ? 俺はこの通り生きて――っ⁉」

言いかけて、不意に頭に鋭い痛みが走った。

……違う。俺は生きてなんかいない。
動画を撮るためこの学校を訪れて。あの穴から落ちたんだ。

全身を強く打って。足が折れたらしく、動くことができずに。
助けを呼ぼうにも、落ちた衝撃でスマホは壊れて。どうすることもできずに、次第に意識が薄れていって。そして―― 

「ああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

思い出した。全部思い出した!

俺はあの時死んだんだ。それじゃあ、今ここにいる俺は……。

考え出した途端、辺りの空気が震えてパンパンとラップ音が鳴り出す。さらに床に落ちていたガラスや、抜けた床の破片が宙を舞いはじめた。

これはポルターガイスト。
起こしているのは、俺なのか……。

「滅!」

水原さんの声でハッと我にかえった瞬間。全身に強い衝撃が走り、俺は後ろへと吹っ飛んで尻餅をついた。

今度はいったい、何が起きた?

慌てて体を起こしてみると、水原さんがツインテールを揺らしながら。

まるでピストルでも撃ったみたいに人差し指を俺に向けていて。その指先には不思議な光が集まっていた。

もしかして今の衝撃は、この子が何かしたのか?

「手荒な事をしてすみません。アナタを落ち着かせるには、これしかなかったんです」
「う、うう。水原さん、君はいったい?」
「私はアナタを祓いに来た者です。亡くなった事に気付かずに、一人で彷徨っている息子を成仏させてほしいって、アナタの両親から依頼されて。肝試しは、もう終わりです」

ゆっくりとこっちに歩いてくる水原さん。そして倒れている俺の胸に手を当てると、そこから光が広がっていく。

それはとても暖かくて、穏やかな光。
そうか。俺はもう、一人でさまよわなくてすむんだな。

「水原さん……キテクレテ、ア リ ガ ト ウ」
「迷う者、荒ぶる魂、鎮まりたまえ――浄!」

最後に見たのは、真っ直ぐな瞳を俺に向ける、水原さんの姿だった。

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