甘いお菓子のように
わたし、中島里美20歳が入社したのはホームページ制作やメディア構築等を手掛けている会社で、主に漫画やアニメを扱っている。

「中島さんには、こちらのスプレッドシートにある夏アニメの一覧をネットで検索してもらってB列に公式サイトのURLをC列に放送開始日を入力してくれますか?」

そう、わたしに説明してきたのがみんなに紅子さんと呼ばれている北川紅子36歳。

説明しているときも、その表情に一切の愛想はなかった。

「分かりました」と元気よく答えると、わたしはすぐさま作品名をGoogleに入力しHPを検索し始めた。

わたしが黙々と作業に没頭していると、「紅子さん!」と呼ぶ若々しい男性の声が聞こえて、わたしはふいにその方を見た。

紅子さんを呼んだのは、隣のセクションで働く二階堂誠司さん28歳。

明るく人を惹きつけるようなさわやかな笑顔にわたしはふいにドキッとしてしまった。

「今夏に『新・ハゲトルマン』実写映画が始まるんですけど、やっぱアニメ記事とリンクさせますか?」

紅子さんやわたしのいるセクションはアニメ部門で、彼がいるセクションが映画部門だった。

そのため、二階堂さんは実写映画化された作品についてもアニメの記事に載せるかを確認したかったようだ。

紅子さんは「えぇ、そうですね」と答えると「ハゲトルマンはアニメでもシリーズ化されてるため入れましょう。そちらの記事作成が終わったらURLを管理表に入れておいてくださいね」と淡々と答えた。

「はい、分かりました!ありがとうございます!」と彼は答えると嬉しそうに去っていった。

隣のセクションから「やべー!紅子さんと話しちゃったよ!マジ綺麗だった」という彼の興奮した声が聞こえた。

紅子さんの耳にも入っているはずなのに、彼女は顔色を一つも変えずパソコンに向かって作業をしていた。

わたしは、美しい紅子さんの横顔を見ながら「この人は一体何を考えているんだろう」と思った。

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