甘いお菓子のように

2

日曜日の17時。

ダスター掛けを終えた梶浦くんが「おはようございます」と言ってレジの中に入ってきた。

わたしは彼を見た瞬間、彼の髪型が変わってるのに気づいた。

「髪を切ったんだ」と思った。

格好良くなってると思ったけど、そんなことは口が裂けても言えなかった。

それに、金曜日に見たあの光景が忘れられず、わたしの心は複雑だった。

「おはようございます」

そう素っ気なく答えるとわたしは陳列された揚げ物をぼーっと見ていた。

すると突然彼が近づいてきて「廃棄ありますか?」と聞いてきた。

「え?」

「なんか、廃棄ありますか?」

わたしは思ってもみなかったことを聞かれて戸惑ったが、すぐに揚げ物の廃棄時刻が貼られた紙を確認すると「あ、ポテトがまもなく廃棄みたいです」と答えた。

彼は「了解です」と軽い感じで言うと廃棄時刻が書かれた紙に分かりやすいように印をつけた。

突然、彼から声をかけられてびっくりした。

この前までは彼から話しかけてくることがなかったから、突然で本当に驚いた。

すると今度は客が現れたのでわたしは慌ててレジに向かった。

もう一人客が現れたので、それは彼が対応していた。

わたしはお客が注文した揚げ物を取ろうとしてトングを手に取った。

トングを使って紙袋を開けて、その中に揚げ物を入れた。

するとわたしの後ろで彼が待っていたことに気づいた。

彼もお客に揚げ物を頼まれたらしく、わたしの使ってるトングを待っているようだった。

わたしは「すいません」と言ってトングの上の方を持って彼に渡そうとした。

けど、彼がわたしの手に触れたので、わたしは思わずトングを落としてしまった。

「わーすいません!」

彼は落としたトングを拾うと「大丈夫です」と言ってそのトングをシンクの中に入れ、別のトングを取って対応した。

わたしは、接客を終えるとシンクの中にあるトングを洗った。

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