悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
ただ、今日のお茶会は純粋にハメられたという事だけは分かった。
「まあ、貴方みたいな方には陛下が一番良く似合っておりましてよ。人の心を忘れ、己の傲慢さで世界を欲し、他国を血の海に染め上げた悪魔王が、あなたの隣には相応しいのよ」
「それ以上は口を慎んでください、セーナ様」
ファウラの心に燃える熱が静かに揺れる。まだ辛うじて残っている淑女を保とうとする自分に腹が立つ。
「あら、どうして?だって本当の事じゃない。あんな王は戦争から帰って来なければ良かったのよ。薄汚れた手で、国を動かしていると思うと本当に不愉快極まりないわ」
「――陛下を悪く言うな」
セーナの言葉に、我慢していたものを全て解き放ち彼女を見つめた。怒りで我を失っては、彼女と同じだと静かに見据えるファウラの目に、周りが退いていく。
「陛下はこの国を守るために命を賭けて戦ったのよ。根拠のない噂に踊らされて、真実を自分の目で確かめないあなたには、陛下を慕うエルディン様に近づく事すら出来ない」
ハッキリと言い放つファウラの目にセーナも怖気づくが、最後の力を振り絞るようにルイゼルトと同じ瞳の髪飾りを奪い去った。
「こんな悪魔と同じ目のようなものを私に見せつけないで!!」
「あっ!!」
手を伸ばすが、時はもう既に遅かった。投げられたセーナの手から離れていく髪飾りは、力なく池の中へと吸い込まれていった。
水面に映った薔薇の花の中に紛れるように、池の中に身を沈めていくのをファウラは黙ってみてはいられなかった。池の中に容赦なく入っていく彼女に、嘲笑う声が聞こえてくる。