悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。





 相手にされないと判断したのか、ルイゼルトはやれやれと掴んだ手を解放しエスコートしながら再び歩き始め、ファウラが気にしていた方向へと進んでいく。街の風景は一気に緑に囲まれるようになり、風はまるで森の中を散歩しているような心地よさが包み込む。

 案内されるように高台へと続く緩やかな坂道を上ると、見えてきた景色に思わず感嘆の声が零れた。



「わあ……!!」



 郊外の少し小高い丘から見えた景色は、ファウラの大好きな花達が咲き誇る花畑だった。

 色とりどりに咲き乱れる花々は、二人を優しく歓迎してくれた。



「こんな綺麗な景色を見たの、生まれて初めて……」
 

「気に入ってもらえたなら何よりだ」


「今日は、私の中で沢山の初めてが生まれる日だわ」



 綺麗な空気を胸いっぱいに吸い込み、ドキドキとする鼓動を今度は抑えようとはしなかった。

 知らない世界をこんなにも知れたことの嬉しさと、ルイゼルトと初めて一緒に見られたことを素直に喜んだ。

 こんなに長い時間一緒にいることも初めてなのだ。嬉しさに嬉しさが募っていくのが止まらない。



「連れてきてくれてありがとう。私、この国がどんどん好きになっていくばかりよ」


「国だけでなく、俺にももっと惚れていいんだぞ」


「……てるわよ」


「ん?」




 か細いファウラの声に聞き取れなかったルイゼルトが聞き返すと、今までにない程に顔を赤く染め上げた彼女が声を震わしながら言葉を紡ぐ。







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