悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。





 息が切れているのを悟られないよう、王女らしさを瞬時に被ったファウラはにこやかな笑みを浮かべたまま、声のする方へと振り返る。

 長い髭を生やし、着ている白いローブの上から金属の鎖を首から腕周りへと巻き付け、琥珀を装飾とした随分と古めかしい杖を持った老人が少し不審がった様子でファウラを見つめていた。

 

(誰だろう、この人……)



 名を訊ねたところで、返って不信感が増すだけだと笑顔を崩さないまま、ファウラは老人の問いに答えた。



「先程、エルディン様にお声掛けしていただいて、陛下にお会いに来たと仰っておりまして。無事御二方が会えたのか確認をしようと陛下の元に参ろうかと」


「左様でしたか。ただご心配なさらず。二方はお会いになっております」


「なら良かったです。陛下の邪魔にならぬよう、部屋に戻ると致します」




 ごきげんようと声を掛けてから、走りすぎてフラフラになった足を隠しながら歩く。

 ただ後ろから感じる気配に、つい振り返りそうになるがファウラの姿を見つけた教育係のローレンが声を掛けて来て、そのまま前へと進む足を急がせる。






< 138 / 187 >

この作品をシェア

pagetop