悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。




「助けてくれたことは感謝するけど……初対面の人に向かって世間知らずとか、もっと金目のある奴にしろとか、余計な事言わなくてもいいじゃない!仮にも一国の姫なのよ?!私って!!」



 誰の耳にも届くことのないファウラの怒りは、静かに馬車が揺れる音に飲まれて消えていく。

 吐き出したことで多少はすっきりしたのか、改めて座席に座り直して姿勢を整える。こんな事で腹を立てていてもしょうがないと、気持ちを穏やかにするべく景色を眺める。


 あまり見慣れない野花に心を洗われながら進めば見えてくる小さな町。

 見えてくる豪奢な馬車に安堵の息を零した。これでようやく自分の任務が果たせるのだ。一国の王女を迎えるともなれば、それなりの護衛の数もある。

 本来だったらファウラの父である国王が、安全な旅路にするべくファウラに護衛を付けるのが当たり前の行動だが、手間暇かける義理を持っていないのが今回の事件の発端だ。

 王都に着くまでの安全は守られれば、もはやなんでもいいとファウラは国王の事を考えるのをやめた。彼女の頭にこびり付くのは、助けてくれたあの男。

 いつかどこかで出会えたその時は、今度はお礼が言いたいと強く思うのだった。








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