悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。



 温かい飲み物を用意してくると、ユトは一旦サロンから出ていき、代わりに侍女がやって来た。

 肌掛けを用意して来てくれたが、本当に体調が悪いわけではないため、やんわりと断ると侍女は大人しく引いてくれた。

 そこまで昨日の自分は派手に気を失ったのか?と、手で顔を覆いたくなるのを堪える。来て早々体の弱い王女として噂されていたとしたら、街の住民は腹を抱えて笑うこと間違いなしだ。



「無理だけは絶対にしないでくださいね……?どこか体調が悪いようでしたら、直ぐにでもお部屋にお連れします」


「大丈夫よ。少し見慣れない環境に興奮しただけだと思うから。暫く休めば、元通りよ」




 庭園でユトが居なかったら、確実にはしゃいでいたほどには興奮していたのだ。あながち嘘ではないと、誤魔化しの笑みを浮かべる。

 それで何とか納得したのか、侍女はほっと胸を撫で下ろした。




(なんで皆こんなに心配してくるのかしら……これでまた倒れたら城中大騒ぎじゃ済まなさそう)




 余計な事で他人を困らせないようにしなければと思っていると、侍女は新鮮な空気を入れようと窓を開けるためにそっと立ち上がる。窓から降り注ぐ光に、彼女の胸元に付けられたアメジストのブローチが反射する。

 そんな彼女が音もなく崩れていくのが、不思議とゆっくりと見えてすかさずファウラは駆け寄った。倒れる寸前に受け止めることに成功し、なんとか衝撃を与えずに済んだと一先ず胸を撫で下ろす。

 ただ彼女の顔色が真っ青なのを見て、緊張感が走る。






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