悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。




 暗がりに揺れる灯りの下、山積みになっていた書類達がようやく片付いた執務机の上で、ルイゼルトは今日提出されたばかりの予算案に目を通していた。

 やや疲労が溜まっているのか、眉間にしわを寄せて目を通す顔には、誰も声を掛けられない程の剣幕な表情を浮かべていた。

 明日に仕事を回せばいいものの、仕事をやっていないとどうも気持ちが落ち着かなかったのだ。




「はあ……」




 無意識に溜め息を零し、手に取る予算案の書類が小さく揺れる。

 考えることを止めようとするが、脳裏に強く浮かぶのはあの蒼い瞳。倒れた直後の血の気のない彼女の顔見て、心臓が潰れそうな思いだった。

 自ら手を施すことは出来ないというのに、傍から離れることなく、ただひたすら冷たくなった手を握っていた。

 その手が温かくなり気が抜けたルイゼルトは、そのまま眠りに落ちた。気がつけば朝になっていて、動き出す彼女の気配に目が覚めた。起きようかと思ったが、その気配をもう少し堪能したいと、目は閉じたままにしていた。

 独りごちる彼女の口から嫌味ったらしい人物が自分だと言われ、やっぱりなと自分を笑うしかなかった。

 嫌われている、やはり自分はどこに行ってもそう見られて生きていく人間なのだと再確認し、そのままふて寝してやろうと、聞こえてくる音を遮断しようとした。近づいてくる気配に、来るなと唸り、遠ざけたつもりだった。

 それだというのに彼女はルイゼルトに更に近づき、触れるか触れないかの距離感にやってくる。







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