悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。




(触れたい……)




 溢れ出してくる抑えられない感情のまま、近づいてきた彼女の気配をしっかりと握り締め、目を開ければ魅力的な瞳がすぐそこにあった。動揺する顔を見て、ルイゼルトはもっと焦らせたいと意地悪げに微笑んで、その積極性を褒めれば、顔を赤く染め上げるのを楽しいとまで思った。

 ぐいっと強引に手を引いて、触れた彼女の熱に心がざわめく。体勢を崩した彼女をそのまま抱きしめそうになるが、これ以上は流石に出来ないと理性を働かせ解放すればすぐに逃げられる。近づこうとすれば、身構えられ、すぐに嫌われているのだと思い出す。

 弱小国を悪魔と契約した悪魔王と呼ばれ、恐れられる相手に向き合おうとする存在がいるわけないのだから。




(……嫌われ者の自覚を持たないとな)




 隠していたであろう荷物のことを指摘すれば、怒りと恥じらいで睨みつけてくる姿すらも、可愛らしいと感じてしまう。ただそれでいいと仕事に戻り仕事に打ち込んでいくうちに、余計な事を言って彼女を困らせたのだと、罪悪感が襲ってくる。

 だが、自分が嫌われ者の選んだのだ。悪魔王として、仕える者からも民からも恐れられ、その威厳で国を守ってきたのだから。

 同じように彼女からも嫌われるだけ。それだけの話だった。

 思えば思う程、どこかルイゼルトの心が小さく痛む。

 悪魔王と呼ばれる最恐の国王が、これまでしてきた行いの中で唯一、小さな少女相手に動じてしまっていたのだ。




「よく分かんねえなあ……」




 またしても彼女に気を取られていることすらも気づかずに、呆けていると扉が叩かれる。

 入れと声を掛ければ、軽食を片手にユトが入ってきた。









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