それは手から始まる恋でした
 目が覚めると私の頭を撫でながら優しい笑顔で私を見つめる高良が隣にいた。

「目覚めた?」
「えっと……」
「胸だけで気を失うって感度良すぎ」
「じゃあ私たち」
「紬が起きるの待ってた。あのまま続けなかった俺を褒めろ」
「ワースゴイ。エライネ」
「棒読み過ぎるだろ」
「だって、この状況が恥ずかしい……」
「可愛すぎ。もう気失うなよ」

 高良の優しく触れる指先を体全身で味わい、私の体はどんどんおかしくなっていく。見つめあうたび胸のあたりが幸せに満ちていく。会社では怒っているか無表情かよくて愛想笑いの高良が私に向かって心から微笑みかけてくれている。

「痛かったら言えよ」

 とうとう私の開かずの扉が開かれるんだ。そして物語でしか知らないあの幸せな絶頂を……

「無理するな」

 無理だった。長年開かなかった扉を開けるのはそんなに簡単にはいかないようだ。酸いも甘いもの噛み分けて沢山の痛みにも耐えてきた。それでもこの痛みは怖かったし、この痛みが続くのかと不安になった。

 私の変化に気がついた高良は笑顔でゆっくり私の頭を撫でながら裸のまま抱きしめてくれた。

 私達はその夜初めて肌を触れ合わせて眠りについた。
< 59 / 118 >

この作品をシェア

pagetop