鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
エピソード2 誰からも愛してもらう資格のない私
「どういうことなんですか!?」

神月さんたちが帰り、袴田課長へ詰め寄る。

「だいたい、モデルが神月伶桜に決まったとか聞いてないんですが」

その予備知識があれば少しは……って、なにも変わっていないか。

「あー、チョーコに伝えるの、忘れてた。
昨日、決まったんだ」

てへぺろ、とか笑われても、ちっとも可愛くない。

「そもそも、私に神月さんのアテンドなんて無理ですよ……」

打ち合わせに当日の案内、あと、連絡係も含まれる。
そんなの、若干コミュ障気味の私にできるはずがない。

「えー。
だってチョーコがやらないと、神月さん、仕事受けてくれないし。
そうなったら会社としてはかなりの損害が……」

「うっ」

いや、俺はいいよ? 俺はかまわないけどさー……って顔しながら、さりげなく脅してくるのは卑怯じゃないだろうか。

「チョーコの補佐、っていうかメインは花谷(はなや)にさせて、チョーコは補佐でいいからさ。
神月さんのご機嫌損ねないように、適当にやっといて。
ね?」

「うっ」

片手で彼が、私を拝んでくる。
こんなことをされたら、嫌とは言えない。

「……わかり、ました」

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