鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「そう、ですね。
ごめん、なさい」

「わかった、無理はするなよ」

意外とあっさり袴田課長が解放してくれ、ほっと息をつく。
初めて、月のもの以外で彼を拒絶した。
そう、したかった。
彼が結婚したあとでもずるずると関係を続けている、この私が。



金曜の夜、神月さんからメッセが来た。
明日、迎えにいくから場所を送るように、って。

「……どうしよう」

本当にあの人は、私を家に連れていく気なんだ。
既読にはしたものの、返信に困る。
神月さんは問題ないと言っていたが、一般人が、しかもお家デートでトップモデルの自宅を訪問、なんてあっていいはずがない。

「いいや、既読スルーしとこ」

考えることを放棄し、携帯を放り投げてベッドへ仰向けに寝転ぶ。
そもそもにおいてどうして、あの人が私にあんなに執着するのかわからない。
せめて私が、普通の子くらい可愛かったら理解できないこともないけど。

――ピコン。

携帯が通知音を立て、嫌々ながらも画面を見る。
けれどそこには、予想と違う人からメッセが届いていた。

【明日、暇か】

【ひさしぶりにチョーコのメシが食いたい】

「……はぁーっ」

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