鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
それを見て、地の底にまで響きそうなほど重いため息が落ちていく。

「……これも、既読スルー」

前はいそいそと食事の準備をして待っていたのだ。
でもいまは、そんな気分になれない。

「……はっきり言えない、私が悪いんだけど」

わかっている、けれどそれができないのが自分なのだ。
できていればこの傷のことだってとっくに、ちゃんと伝えられている。

――ピコン。

「無視、無視」

きっと、袴田課長から返信の催促だと携帯の上に枕をのせたけれど。

――ピコン。

――ピコン。

――ピコン。

――ピコン……。

「あー、もー、しつこい!」

鳴り続けるそれを、仕方なく手に取る。
確かに袴田課長からも来ていたが、大半が神月さんからだった。

【僕からのメッセを既読スルーするんだ?】

【へえ、いい度胸してるね、苺チョコちゃん】

【君がそうくるなら、僕は奥の手使っちゃうもんね】

【明日はたーっぷりお仕置きしてあげるから、楽しみにしててね】

「……奥の手?」

とはなんだ?
さらにお仕置きを楽しみにとかできるはずがない。
しかしながら家の場所を教えていないので、どうせ……。
< 69 / 105 >

この作品をシェア

pagetop