鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
マンション、という名ではあるが、もとは築年数二十年を超えたコーポだ。
私がルーナ化粧品へ転職し、あそこへ引っ越すほんの一年ほど前、外装、室内共にリフォームしてマンションとして生まれ変わっている。
なのでマンションとついていてもコーポに毛が生えたものに過ぎない。

「いろいろ心配だなー。
苺チョコちゃんは可愛いから、変な奴が不法侵入してきたりしないか」

私に限ってそんな心配はご無用だ、とは思ったものの、黙っておいた。
袴田課長のような人もいるし、神月さんにこうやってつきまとわれているんだから、もしかしたら需要はあるのかもしれない。

「そうだ。
僕の家に引っ越しなよ」

「……は?」

さもそれがいい考えだとばかりに彼は頷いているが。
それこそこの私に魅力を感じる変態さん……うん、トップモデルに変態はない。
でも変態だと思うんだもん。
とにかくその変態さんと同居だとか、危険でしかない。

「引っ越しはいつがいいかな。
今度、僕のスケジュールを確認しておくよ」

なぜか彼の中で私の引っ越しは決定事項になっていて、あたまが痛い。

「私はあなたの家に住むだなんてひと言も……!」

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