指輪を外したら、さようなら。
 互いの律動(リズム)がピッタリと重なって、押しても引いても気持ちいい。

 ほとんど同時に、彼女が俺をきつく締め上げ、俺は果てた。

 千尋は俺の首に抱き着いたまま、離さなかった。

「千尋、拭いてやるから――」

「やっ」

「やっ、って――」

「もっと……」

 甘い声でねだられて、口づけられる。わざと唇を離して、動物のように舌を出して絡ませると、視線も交わった。

 互いを見つめながら、ぴったりと身体を重ね、舌だけで刺激し合う。

「もっと……」

 千尋がそう漏らした時、俺は今なら欲しい言葉を貰えると思った。

「何が?」

「もっと、シて……」

「何を?」

「もっと、愛して……」

「どうして?」

「……」

「千尋、言って」

 こうして酔った、本能むき出しの言葉こそ、千尋の本心だと思う。

 俺を求めて、俺に愛されたいと願う彼女の言葉こそ、嘘や誤魔化しのない千尋の本心。

 だからこそ、聞きたい。

 今だけでいいから。

 その言葉だけで、千尋への愛を貫けるから。

「愛してる……から……」

 見上げた彼女の目から涙がこぼれる。真っ直ぐ、俺の胸に。

「比呂を愛してるから……」

 次々に涙が滴り、俺の胸を濡らす。

「だから……、比呂にも……愛されたい……」

「愛してるよ?」

「いつまで……?」

「え?」

「いつまで愛してくれるの……?」

 ぼろぼろ涙を流しながら、不安を吐露する姿は、幼い子供のよう。

 俺は汗で張り付いた彼女の頬の髪を手で払い、露わになった首筋に口づけた。

「ずっと、だ」

 なだめるように頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めた。

「ずっと、愛してるよ」

 朝になれば絶対に怒られるとわかっていながら、彼女の首筋に痕を残す。

「心配なら、ずっとそばにいろよ」

 疲れ果てて意識を手放すまで、俺は幾度となく彼女に俺の証を注いだ。
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