CROSS LOVELESS〜冷たい結婚とあたたかいあなた


いつの間にか、外では雨が降り出していた。

スリッパが脱げ落ちた私は、裸足のままワンピース姿で庭園に立つと雨を浴びながら笑った。


「あはははッ……私、やっぱり……必要無かった……玲さんは私だから結婚したんじゃない……結局……誰も……私を……必要としてくれない……」

私の、20年の血の滲むような努力は何だったんだろう?立派なお家の…玲さんに相応しくなるよう、日夜努力し続けた。オシャレや恋や娯楽…友達。楽しいことは全部諦めて、テレビやスマホすら許されず、全てお父様の言いなりにしてきた。

どれだけ、美香が羨ましかったか……。
恋に青春にオシャレに全力で打ち込む妹が妬ましくて、不公平感に押しつぶされそうになった。
でも、きっと私は期待されてるから…私だから玲さんの妻に選ばれたんだ。そう…思いたかった。

「薫様……このままでは風邪をひかれます。お部屋へお戻りを」

見かねたか、烏丸さんがジャケットを肩にかけてくださったけれども。私はすぐに突っ返した。

「いいんです……私は、偽物ですから」

熱い滴が、冷たい雨に混じって頬を伝う。

その場で蹲った私は、しばらくしてむくむくと反発心が湧き起こる。

(……悔しい)

そして、すくっと立ち上がった私は烏丸さんに頼んだ。


「……蓮さんのお部屋へ…案内してください」

彼から預かったカードキーを、ギュッと握りしめて。



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