CROSS LOVELESS〜冷たい結婚とあたたかいあなた

薄暗がりでも映像の光に照らされ、ハッキリと浮かび上がり見えるだろう。

「ん……ッ」

やめて、と言いたいのに。抵抗したいのに。
私の弱点を知り尽くした彼に翻弄され、頭が真っ白になって思考が溶けていく。

「蓮、貴様…!おれの妻になにを」
「おれの、妻?ハッ」

蓮さんは玲さんの発言を鼻で笑い飛ばすと、再び映像を流した。

『おれも、美香とどうこうなるつもりはない…クッ』
『だよねぇ、玲。美香と遊ぶのが好きなだけだもんね?』
『当たり前だろ…おれは、いろんな女と遊びたいだけだからな……結婚はいい隠れ蓑になる…今まで通りに、仲睦まじい夫婦は演じてやる』


『おれは君を愛さないし、絶対に抱かない。だが、子どもを産んでもらう。そのために蓮に抱かれてこい。一卵性双生児だから遺伝子は同じだろうからな』

身勝手過ぎる玲さんの発言に、さすがの周囲もざわめき出した。

「こんなひどい事を薫に言っておいて、よくものうのうと妻と言えるな。言っただろう、立場を返してもらう、と」

そうして私を抱きしめたまま、蓮さん……いえ、玲さんは静かな怒気を孕む視線を兄でなく弟へ向けた。

「オレが、本当の沢村 玲だ。だから、薫はオレの最愛の妻だ」
「……れ、蓮さんが…玲さんなの…?」

恐る恐る訊ねると、ああ。と彼は…玲さんが答えてくれた。

「本来、先に生まれた長男がオレだった…だが、8つの頃。オレ達は入れ替わったんだ。蓮の卑怯な脅しでな」
「脅し……?」
「は、何かと思えば。皆さん、コイツは被害妄想が激しいんです!だから虚言を信用しないでください!」

玲さん…もとい蓮さんがそう叫ぶけれども…。

玲さんは自分の喉元をバッと晒す。そして、後ろのスクリーンを指さした。そこに表示されたのは、診断書。

「蓮は、オレを脅しました。これ以上婚約者にひどいことをされたくなければ、立場を交換しろ…と。この傷は、そのときに着けられました。薫に同じように怪我をさせたくなければ従え、と」
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