年下男子は恋愛対象になりますか?
【40】どうか
あっという間に時間が過ぎて、25日クリスマス当日になった。仕事後に隼人君と会う約束をしている日。

決着ついたと連絡してくれた日から今日まで、隼人君とは会っていなかった。その間あの子が何もしてこなかったら会うという約束をして、何度かメッセージのやり取りをしただけ。

この選択が正しいかも分からなかったけど、気持ちの整理もしたかったから。

「おーい、これ急ぎで入力してほしいんだけど、少しだけ残業頼めたりする奴いない?」

あと数十分で定時になるという時間に、先輩が書類をヒラヒラさせながら大きな声を出した。近くに座っていた同じ部署の人達が一斉に顔を背ける。

そうだよね。金曜のクリスマスだし、誰も残業だなんてしたくないよね。でも誰かがやらなきゃいけないわけで。

……この時間ならまだ家を出てないかな。
隼人君、ごめん!

「私やりますよ。それぐらいだったらそんなに時間かからないでしょうし」

「マジか!今度何か奢ってやるからな」

「美味しいお肉でお願いしまーす」

このタイミングで頼まれたのも運命。
隼人君に会いたくないわけじゃない。仕事で残業するだけ。

「ちょっと先輩、引き受けちゃって大丈夫なんですか?このあと彼氏さんと約束してるんじゃ……」

「すぐ終わりそうだし大丈夫だよ。心配してくれてありがと。ちょっと連絡してくるね」

メッセージを送るか悩んだあげく、電話をかけることにした。

『はい』

久しぶりに聞く声に胸がドクンとなる。
いつもより低くて、元気がなさそうな声。

「隼人君もう家を出ちゃった?悪いんだけど、待ち合わせ時間を遅らせてもらうことって出来るかな?急に残業頼まれちゃって」

気になったけどあまり時間をかけるわけにもいかず、用件のみを手短に話した。

『大丈夫です。大体の時間分かったら連絡して下さい』

「うん。本当にごめんね」
< 673 / 687 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop