【番外編】円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語

 王立高等学院の魔導具科の生徒たちによる魔導飛行機、通称「コンドル号」はその後も改良を重ね、より安全に誰でも飛行できるようになっていった。

 乗り手の第一人者であるフレッド・ハウザー辺境伯は、本名よりも「コンドル辺境伯」という通称名で呼ばれることのほうが多かった。

 彼は、辺境警備のパトロールにこのコンドル号を使用するだけでなく、通常ならば人の近寄れない切り立った岩場の魔物の巣から魔導具作りの貴重な素材を入手してくるのも得意だった。

 このコンドル辺境伯の元をたまに訪れる赤毛の女性がいたという。
 二人で仲良く飛行を楽しんでいる様子を見た者たちが、自分も空を飛んでみたいと希望するようになり、それに応える形でスカイスポーツの礎を築いたのもまたコンドル辺境伯だった。

 あの女性は何者なのかと尋ねられると、彼はきまって
「赤毛は、俺の命の恩人だ」
と言って少年のようにくしゃりと笑い、家族にすら終ぞその素性を明かすことはなかったという――。


―END―


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