砂浜に描いたうたかたの夢
そんな少々不便な町の唯一の娯楽は海。つまり自然のみ。

ここでも草花は観察したけど、ほとんどの種類は既に先月描いちゃってた。

恐れていたことがついに来てしまった。



「しょうがないでしょ! そっちが勝手に話進めたんじゃない! こっちにだって計画があるんだよ!」

「でも、出発まで1週間も空いてたじゃないか。充分立て直す時間はあっただろう」



拳に力を入れ、湧き上がった怒りを抑え込む。

当事者じゃないからって簡単に言って……! 何度も練り直すこっちの気持ちも考えてよ!

知らないだろうけど、今の計画、一度崩れたのを再構築したんだからね⁉



「まぁまぁ、そんな怒んなよ」



すると、智が宥めながら居間に入ってきた。どうやら廊下にまで聞こえていたようだ。



「ネタ切れで悩む一花ちゃんのために、とっておきの物を見つけたんだ。いるかい?」

「いる……っ! ちょうだい!」



藁にもすがる思いで即答した。

若干口調がおかしいのが引っかかるが、この際ネタに繋がるならなんでもいい。
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