砂浜に描いたうたかたの夢
「大丈夫よ! 今時こういうの、昭和レトロって言われてるみたいだから! 渋い男を演出できるわよ〜!」

「えええ……」



渋い男って……俺まだ10代なのに……。それより、なんでそんなに詳しいの?

スマホならまだしも、ガラケーで、ネット環境もあまり整っていない田舎町で、一体どこから情報仕入れてるんだ……?



「時代遅れが気になるなら、それこそ流行り物を合わせるといいんじゃないか? 例えば、袴みたいなズボンとか!」

「いいわね! 最近のテレビで若い人がよく履いてるし!」



……なるほど。袴似のズボンは、ワイドパンツのことかな。
毎日朝昼晩、情報番組を観てるから、そこで仕入れてるのかも。

苦笑いで2人を眺めていると、両膝の上に何かがズシッとのしかかった。



「あー! 俺のスイカ!」



目を向けてみたら、赤柴系雑種のポチがスイカにかぶりついていた。



「こら! ポチっ! ごめんね凪くん! おばあちゃんがちゃんと見てなかっただけに……」

「ううん、大丈夫」
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