砂浜に描いたうたかたの夢
…………え?



「慌てて隠してたけど、俺はこの目でちゃんと見たぞ。お前がめちゃくちゃ美味そうな桃を持っていたところを!」



ビシッと自信満々に指を差した智。

なんだ、そっちかよ……。

凪くんのことではなかったと分かると、全身に入っていた力がどっと抜けて、その場にへなへなと座り込んだ。



「もう、ビックリさせないでよ。一体何事かと思ったじゃない。普通に聞いてよ」

「だって、こうでもしないと絶対口割らねーと思ってたから。丸々1個食うの?」

「なわけないでしょ。あれはひいおばあちゃんにあげるの」

「ひいばあちゃん? 頼まれたの?」

「いや、実は……」



腰を上げて最初から説明した。



「白寿と百寿かぁ。でも、お祝いはもうしたって言ってなかったっけ」

「そうだよ。だけど、せっかく来たんだから、やっぱり何かしたいなって」



百寿祝いは来年でもできるけど、白寿祝いは今年しかできない。

それに、来年も必ず帰省するとは限らないし、ひいおばあちゃんも必ず元気でいるとは限らない。もし入院しちゃったら、それこそ直接祝えないから。
< 155 / 322 >

この作品をシェア

pagetop