砂浜に描いたうたかたの夢
声を詰まらせながら言葉を紡いだ父。

やっぱりそうだったんだ……。1ヶ月なら49日もまだだもんね。



「……そっか。私こそ、おじいちゃんに今年はもうしないって言われてたのに……ごめんなさい」



事情を聞き、自分の非を謝罪した。

父がしたことは、決して親としてふさわしいとは言えない言動だった。だけど、火種を生んだのは私だ。


私が素直に言うことを聞いていれば、ここまで大事には発展はしなかったはず。

被害を受けたのは私のほうだけど、それだけで父だけを責めていい理由にはならない。



「いや……そもそもお父さんがきちんと説明しなかったのが悪いし……」

「じゃあ……おあいこ?」

「一花がいいなら……」



これ以上謝罪大会を続けるとらちが明かないので、お互い様ということで落ち着いた。

海に別れを告げ、真っ暗になった住宅街を歩いて帰路に就く。



「ただいま」

「一花ちゃん……!」



曇りガラスの引き戸を開けて中に入ると、待ってましたとばかりにみんながバタバタと走ってやってきた。
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