砂浜に描いたうたかたの夢
「それより、二花さんの本名、一花なんですね」

「あっ、はい。生まれた時間がゾロ目なので、全部同じ数字にしちゃおうと思って」



落ち込んでいると、気を利かせて話を逸らしてくれた。



「フウトさんの本名はなんですか?」

「ナギ。漢字だと風に止まる。フウトはその字が由来」



空に書いて説明する彼の指先を眺める。

凪は穏やかな海って意味だっけ。まさに、名は体を表す。物腰が柔らかくて優しいフウトさんそのものだ。



「素敵な名前ですね。どっちで呼んだらいいですか?」

「そんなの……本名に決まってるでしょ。ウシミツニャンコちゃんと一花ちゃん、どっちで呼ばれたい?」

「っ……!」



華麗な返しに思わず噴き出しそうになった。

そう言われると本名一択ですけど、そこはユーザー名じゃなくて二花じゃない⁉



「……一花でお願いします」

「了解。お互い年も近いし、さん付けなしで呼ばない? 敬語も外してさ。って、もう外してるけど」

「はい。じゃあ凪くんって呼びますね。あっ、呼ぶね」

「うん。よろしくね、一花ちゃん」
< 65 / 322 >

この作品をシェア

pagetop