砂浜に描いたうたかたの夢
「あのっ、あく……」



そう言いかけて右手を出したその時、ハッと気づく。

……ダメだ。ジョニーを触ったからダメだ。



「どうしました?」

「いや、なんでもないです」



出した手を急いで引っ込めた。

ジョニーは何も悪くない。ただ、顔を舐められた時に手でガードしたから、よだれが付いている可能性がある。

家に犬が3匹もいるなら、そういうのは多少慣れてるかもしれないけど……やっぱり、推しとは綺麗な手で握手したい。



「あの、一緒に写真撮ってもいいですか?」

「あー……ごめん。写真はちょっと……」



再び勇気を出したものの、断られてしまった。

……ですよね。SNSで繋がっているとはいえ、昨日会ったばかり。そりゃ警戒しますよね……。



「すみません……」

「いや、こっちこそ。俺、写真うつりが悪いからあまり撮られたくなくて。ごめんね」



申し訳なさそうに眉尻を下げた彼。

思い返せば、これまでの投稿の中に、顔写真は1枚もなかった。
顔出しなしで活動しているのなら、写真を拒むのも当然。

衝動的に口走ってしまったことを深く反省した。
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