あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
必死で自分にそう言い聞かせ、何とか夏祭りを無事に終えることができた。


みんなで園長先生の話を聞いてから、さよならの挨拶をして、そのまま解散した。


慶都さんはまた私の方に向かって軽く会釈をし、真斗君と一緒に帰っていった。


「慶都さん、行っちゃった……」


背中を見送りながら、そんな風に心の中でつぶやいた。


ホッとしたのか、それとも寂しいのか? よくわからない感情が揺れ動いてる。


「彩葉先生。やっぱり気分が悪いんじゃないですか?」


「だ、大丈夫だよ。今日はありがとうね」


心配してくれた理久先生の声掛けにも、笑顔が引きつって上手く返せない。


「今日、片付けの後はお疲れ様会ですけど……体調悪かったら無理しない方が……」


「ううん、ちゃんと参加するし、本当に心配しないで。大丈夫だから」


どこまでも優しい理久先生に対して、ちょっと冷たい態度を取った自分が、すごく嫌な人間に思えた。
< 105 / 235 >

この作品をシェア

pagetop