あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
間違ってもあの人に自分だと気づかれては困る。


絶対に、彼に迷惑はかけられないから。


「ごめんね、理久先生。私、もう帰るね。お疲れ様」


突然の九条さんとの出会いで、情緒が不安定になってるのがわかる。


緊張の糸が途切れず、ずっと心臓がドキドキしたままで、さっきから全然元の自分に戻れない。


他の先生達の顔もまともに見れないし。


「お疲れ様です。お先に失礼します」


私は、入口近くにいた先生に頭を下げた。


「あっ、ねえ、彩葉先生。さっきのイケメンさん見た? すごく素敵な人だよね~」


「あっ、そ、そうですよね。すみません、じゃあ失礼します」


「彩葉先生? 大丈夫? どうかした?」


「い、いえ! 全然大丈夫です」


変な顔で無理やり苦笑い。


私って、自分の気持ちを隠すのがこんなに下手だったんだ。


あまりの衝撃から立ち直れないまま、とにかく保育園を急いで飛び出した。
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